鼻の主な病気として鼻炎、副鼻腔炎、鼻出血にわけて説明します。
| 1.感染性 a)急性鼻炎、 b)慢性鼻炎、 c)ウイルス性、 d)細菌性、 e)その他 |
| 2.アレルギー性 a)通年性アレルギー性鼻炎、 b)季節性アレルギー性鼻炎、 c)local allergic rhinitis(LAR)、 d)職業性アレルギー性鼻炎 |
| 3.非アレルギー性 a)血管運動性鼻炎、 b)好酸球増多性鼻炎、 c)薬物性鼻炎、 d)職業性非アレルギー性鼻炎、 e)老人性鼻炎、f)味覚性鼻炎、 g)萎縮性鼻炎、 h)妊娠性鼻炎、 i)その他 |
花粉症は花粉によるアレルギー、急性鼻炎はウイルス感染です。どちらも発症時期も春、秋などでくしゃみや鼻水等の症状も似ています。急性鼻炎では、発熱を伴いウイルスに感染した鼻の粘膜細胞がはがれおちるので回復期には水様性の鼻水が膿のよう鼻漏になります。ただれた粘膜は温度や乾燥、花粉などにも過敏になりやすいので花粉症の合併や増悪も起こしやすくなります。治療は抗ヒスタミン剤投与などですがどちらもこじれてくると後に述べる急性副鼻腔炎を引き起こすと抗生剤が必要になります。
| 花粉症 | 急性鼻炎 | |
|---|---|---|
| 病因 | アレルギー | ライノウィルスなど |
| 発症 | 花粉開花期 | 風邪 |
| 症状 | くしゃみ、鼻水、鼻閉、目や鼻のかゆみ | くしゃみ、鼻水、鼻閉、頭痛、乾燥感 |
| 鼻漏 | 多量、水様性 | 多量 水様性→粘濃性、薄利上皮細胞 |
| 鼻鏡所見 | 発赤、腫脹、水様性鼻漏 | 発赤、腫脹、浮腫 |
| 全身症状 | 寒気、頭痛 | 頭痛、咽頭痛、発熱、全身倦怠感 |
| 経過 | 開花期間中 | 1-2週間、春と秋 |
| 随伴症 | 目、咽頭、皮膚症状 | 副鼻腔炎、咽喉頭炎 |
花粉症というとスギ花粉の時期に目が痒くなって鼻水がでるというスギ花粉によるアレルギー性結膜炎とアレルギー性鼻炎が思い浮かびます。アレルギー性鼻炎には、花粉症以外にもハウスダストとダニによる通年性鼻炎もあります。
●I型アレルギー疾患
●三徴
アレルギー性鼻炎はIgE抗体によるI型アレルギー疾患でくしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状です。診断は鼻内所見と問診、検査のうち2つあれば確定します。
●鼻内所見
●問診
●検査 いずれか二つ
| 花粉症 | 通年性アレルギー性鼻炎 | Local alleregic rhinitis | |
| 発症年齢 | 青年 10-20歳代 | 小児 3-10歳代 | 不明 |
| 性 | ♂<♀ | ♂>♀ | 不明 |
| 鼻症状 | 典型 | 典型 | 非典型 |
| 他のアレルギー合併 | 多い | 多い | 眠症状少ない |
| 鼻汁中好酸玉 | + | + | - |
| 皮膚テスト、血中特異的IgE | + | + | - |
| 鼻粘膜IgE | + | + | + |
| 鼻誘発試験 | + | + | + |
| 鼻過敏性 | 亢進 | 亢進 | やや亢進 |
| 頻度 | 50% | 60% | 不明 |
| 好酸球増多性鼻炎 | 血管運動性鼻炎 | |
| 発症年齢 | 成人 | 成人 |
| 性 | ♂≦♀ | ♂≦♀ |
| 鼻症状 | 非典型 | 非典型 |
| 他のアレルギー合併 | 眠症状少ない | 眠症状少ない |
| 鼻汁中好酸玉 | + | - |
| 皮膚テスト、血中特異的IgE | - | - |
| 鼻粘膜IgE | - | - |
| 鼻誘発試験 | - | - |
| 鼻過敏性 | やや亢進 | やや亢進 |
| 頻度 | 2% | 7% |
●ダニ
●花粉
第2世代抗ヒスタミン薬とは初期の第1世代抗ヒスタミン薬の副作用である眠気、痙攣誘発、尿閉、眼圧上昇などの副作用である抗コリン作用をなくした抗ヒスタミン薬で現在の治療の主流です。主にくしゃみ、鼻水に良く効きます。副作用は眠気が起こる場合があります。
点鼻ステロイド薬はくしゃみ、鼻水、鼻閉のすべてに有効です。喘息では妊娠中の喘息発作の治療のためにステロイド吸入薬が推奨されており母体、胎児に影響はないとされています。
点鼻ステロイドも同様に妊娠中使用可能です。副作用は刺激症状でくしゃみ、鼻水発作がおこったり鼻出血等です。
抗ロイコトリエン薬は眠気がなく鼻閉に有効で喘息合併鼻炎に喘息とアレルギー性鼻炎両方に効きます。約30%の人がnon-responderといって薬が効かないところと薬価が高いのがネックです。副作用として多いのは血尿、腹痛等です。
遊離抑制薬はインタール、リザベン、アレギサールが代表的な薬です。アレルギーを起こすヒスタミンやロイコトリエンを貯留して抗原侵入時に破裂して放出する肥満細胞の膜を丈夫にしてアレルギー症状を抑える薬剤です。安全性が高く妊娠中にもつかえ副作用も少ないのですが小児には有効ですが成人には効果があまりありません。
Th2サイトカイン阻害剤とは抗原侵入時に抗原特異的IgEをつくるTリンパ球を活性化させるTh2サイトカインを阻害する薬剤でIgEの量を減少させすべてのアレルギー反応を抑えます。効果発現まで2週間以上かかる事と副作用では特徴的なのりの佃煮のような口臭が起こります。鼻炎だけでなく過敏性膀胱やのどのいがいがしてでる咳などにも有効です。
抗PCGT2XA2薬はバイナスという薬剤です。鼻閉にだけ有効でくしゃみや鼻水には無効です。喘息にも有効ですが、3週間以上内服しないと効果がです。出血傾向がでやすく月経時出血量が多くなるなど若干使用しにくい薬です。第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤はディレグラあるいはプソフェキという薬剤で、アレグラ(フェキソフェナジン)とプソイドエフェドリンの合剤です。鼻閉には極めて有効ですが、食前内服なのと、血管系に作用するので動悸や血圧上昇、頭痛などの副作用の可能性があります。
抗IgE抗体については後ほど詳しく説明します。
| 重症度 | 初期療法 | 軽症 | 中等症 | 重症 | ||
| 病型 | くしゃみ、鼻漏型 | 鼻閉型、充全型 | くしゃみ、鼻漏型 |
鼻閉型、充全型 | ||
| 1 第二世代抗ヒスタミン薬 |
○ | ○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 2 点鼻ステロイド | ○ | ○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 3 抗LT薬 | ○ |
○ |
|
○ |
|
○ |
| 4 遊離抑制薬 | ○ |
|
|
|
|
|
| 5 Th2サイトカイン阻害薬 | ○ |
|
|
|
|
|
| 6 抗PGD2抗TXA2薬 | ○ |
○ |
|
○ |
|
○ |
| 7 第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤法 | ○ | ○ | ||||
| 治療法 | 1or1+2 | 1+2 | 1+2+(3or6), 2+7 | 1+2 | 1+2+(3or6), 2+7 | |
| 治療法(2) | 抗IgE抗体 | 点鼻血管収縮薬、経口ステロイド、抗IgE抗体 | ||||
| 重症度 | 軽症 | 中等症 | 重症 | ||
| 病型 | くしゃみ、鼻漏型 | 鼻閉型、充全型 | くしゃみ、鼻漏型 |
鼻閉型、充全型 | |
| 1 第二世代抗ヒスタミン薬 |
○ |
○ |
○ |
||
| 2 点鼻ステロイド | ○ | ○ |
○ | ○ |
○ |
| 3 抗LT薬 | ○ |
○ |
|||
| 4 遊離抑制薬 | ○ |
||||
| 5 Th2サイトカイン阻害薬 | ○ |
||||
| 6 抗PGD2抗TXA2薬 | ○ |
○ |
|||
| 7 第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤法 | ○ | ○ |
|||
| 治療法 | どれか1つ | 1+2(症状に応じて併用) | 2+(3or4or5) | 1+2 | 2+(3or6), 2+7 |
スギ花粉症の治療は初期、導入、維持療法の3ステップで行います。初期療法とは予防ですが薬剤の予防投与は保険診療では認められず自費診療になるためガイドラインでは初期療法と命名されていると考えられます。導入療法は早期に症状をとるために第2世代抗ヒスタミン薬、経鼻ステロイド薬、抗LT薬の3剤を同時投与して症状改善後に2剤、1剤と減薬して維持療法とします。
●初期療法
●導入療法
●維持療法
飛散開始日には15%の患者が発症している
シダキュアはスギ花粉を材料に製剤された減感作療法の薬剤です。スギ花粉症があり,5歳以上で、投与前のスギ特異的IgE抗体陽性(RASTにてクラス2以上)であれば適応になります。スギ花粉飛散時期をはずして治療を開始する必要があります。1日1回の投薬で、治療開始後3ヶ月から半年経過して効果が現れると言われています。治療期間は最低3年で5年間治療すれば,治療をやめても7-8年は効果が持続します。副作用としては、致死的ものはないが、舌や口腔内の浮腫、かゆみなどは5%以上にあります。治療効果は20%が症状消失、60%が症状軽減、20%が不変です。
ミティキュア、アシテアはダニエキスを材料に製剤された減感作療法の薬剤です。ダニアレルギーがあり,5歳以上で、投与前のダニ特異的IgE抗体陽性(RASTにてクラス2以上)であれば適応になります。両薬剤の違いはダニの抗原量で、アシテアの方が5.7倍抗原量が多いです。そのため、最初はミティキュアで開始することが多く、ミティキュアで効果不十分の場合、アシテアが試されます。スギ花粉症と違っていつでも開始できます。1日1回の投薬で、治療開始後3ヶ月から半年経過して効果が現れると言われています。治療期間は最低3年で5年間治療すれば,治療をやめても7-8年は効果が持続します。副作用としては、致死的ものはないが、舌や口腔内の浮腫、かゆみなどは5%以上にあります。治療効果は20%が症状消失、60%が症状軽減、20%が不変です。
内服治療や点鼻薬にて鼻閉の制御が困難な場合、手術治療も選択肢の一つとなります。これらは鼻閉改善手術と言われます。代表的なものは鼻中隔矯正術や粘膜下下鼻甲介切除術ですが、これらは手術室などの設備が必要ですので、当院では日帰り手術可能なラジオ波による下鼻甲介焼灼術を施行しています。
鼻閉改善手術
○鼻中隔矯正術/粘膜下下鼻甲介骨切除術(+後鼻神経切断術)
○鼻腔粘膜焼灼術
ジェネレーター(エルマン社・サージトロン)
下鼻甲介刺入用プローブ
② 局所麻酔薬を下鼻甲介に局所注射します
③ 2本刺入針のついたプローブを数カ所下鼻甲介に刺して、ラジオ波で焼灼します。
両鼻施行しても10分程度です
④ 出血があれば止血ガーゼを挿入し、15分ほど経過観察します。
⑤ 経過観察後、医師の診察のあと帰宅可能です
花粉症は、樹状細胞が花粉を感知することでB細胞が刺激され、B細胞から大量に放出されたIgE(E型免疫グロブリン)が肥満細胞に結合することで放出されるヒスタミンやロイコトリエンによって引き起こされます。従来の花粉症の薬剤はこのヒスタミンやロイコトリエンを抑制することで,症状を軽減させていました。昨今の生物学的製剤の進歩により、このIgEを直接ブロックする抗体薬(抗IgE抗体)、オマリズマブ(商品名ゾレア)が開発されました。元々重症喘息の治療薬として使用されてましたが、2020年の花粉症シーズンから重症花粉症患者さんに使用可能となりました。非常に効果の強い薬剤ですが、その使用には下記の通りたくさんの条件があります。
●12歳以上の重症花粉症の患者さんに適応
●2週間あるいは4週間に一度の皮下注射薬であるが、花粉症では在宅注射が認められておらず、病院での注射が必要
●スギ花粉症のみの適応なので、治療可能な期間は2月から4月(地域による)のみ
●そのシーズンのはじめに従来の治療(抗ヒスタミンなどの)を行い、無効であったことを確認しないといけない
●治療前の血液のIgEの量と体重で注射の頻度と用量が決まるので、治療前の採血が必須
●高価な薬剤(150mgのシリンジで21323円,ペン型はもう少し高価)であり、体重やIgEの量で必要な用量が変わるので、薬剤価格のみで1ヶ月あたり11655円から170584円(3割負担で3497円から51176円)となる
スギ花粉が全国的に広がり有病率も増加傾向にあることから無花粉スギの開発が進められています。富山県で見つかった無花粉スギから品種改良された「はるよこい」が開発されました。
当初は無花粉のため挿し木でしか増産できなかったのですが、現在では種子から育てられる品種もできています。しかし、スギの植林面積は全国460万㏊で1㏊に5000本の苗が必要ですし、毎年1万㏊植え替えても460年かかるので現実的には現在植えられているスギが花粉飛散年齢をおえてスギ花粉が自然終息する2050年まで待つしかないと考えられます。
※OTC とは Over the counterの略です。
代表的なスイッチOTCとそのジェネリック品と医院で初診で処方だけをした場合の自己負担額を以下のように計算してみました。医院で再診の場合はもっと安くなりますし、ネブライザー等の処置や検査をするともっと高くなります。昨年の薬価で計算していますので完全にこの通りにはなりませんのでご了承ください。
6日分 \1280 12日分\1980
10日分 \1880
7日分 \1380 14日分\1980
| アレグラ(1日薬価150) | 7日 | 14日 | 21日 | 28日 | 56日 |
| 医院初診時 | \1,030 | \1,110 | \1,110 | \1,110 | \1,110 |
| 院外薬局 | \750 | \1,150 | \1,490 | \1,840 | \3,120 |
| 合計 | \1,780 | \2,260 | \2,600 | \2,950 | \4,230 |
| アレグラFX(197or141円) | \1,380 | \1,980 | \3,360 | \3,980 | \7,920 |
| フェキソフェナジン(106円) | 7日 | 14日 | 21日 | 28日 | 56日 |
| 医院初診時 | \1,040 | \1,120 | \1,120 | \1,120 | \1,120 |
| 院外薬局 | \660 | \970 | \1,220 | \1,470 | \2,380 |
| 合計 | \1,700 | \2,090 | \2,340 | \2,590 | \3,500 |
| ジルテック10(110円) | 10日 | 14日 | 20日 | 30日 | 60日 |
| 医院初診時 | \1,030 | \1,110 | \1,110 | \1,110 | \1,110 |
| 院外薬局 | \810 | \990 | \1,210 | \1,570 | \2,580 |
| 合計 | \1,840 | \2,100 | \2,320 | \2,680 | \3,690 |
| ストナリニZ(188円) | \1,880 | \3,760 | \5,640 | \11,280 | |
| セチリジン10(64円) | 10日 | 14日 | 20日 | 30日 | 60日 |
| 医院初診時 | \1,040 | \1,120 | \1,120 | \1,120 | \1,120 |
| 院外薬局 | \670 | \790 | \930 | \1,150 | \1,750 |
| 合計 | \1,710 | \1,910 | \2,050 | \2,270 | \2,870 |
| アレジオン10(110円) | 6日 | 12日 | 24日 | 48日 | 60日 |
| 医院初診時 | \1,030 | \1,030 | \1,110 | \1,110 | \1,110 |
| 院外薬局 | \620 | \890 | \1,360 | \2,180 | \2,570 |
| 合計 | \1,650 | \1,920 | \2,470 | \3,290 | \3,680 |
| アレジオン10(61円) | \1,280 | \2,560 | \5,120 | \10,240 | \12,800 |
| アルピード10(70円) | 6日 | 12日 | 24日 | 48日 | 60日 |
| 医院初診時 | \1,040 | \1,040 | \1,120 | \1,120 | \1,120 |
| 院外薬局 | \550 | \760 | \1,080 | \1,610 | \1,860 |
| 合計 | \1,590 | \1,800 | \2,200 | \2,730 | \2,980 |
※原稿制作中